睡眠は万病に効く薬だった!?うつ病体験者が語る!睡眠の重要性と過眠、不眠

うつ病は精神病と言われていますが、決して精神論で治るものではなりません。「気持ちが低い」とか「甘えているだけ」という批判を簡単にする人がいます。うつ病になったことがない人にはそう映るのも仕方ない面もありますが、うつ病の人には非常に酷な話です。うつ病は脳の病気なのです。

うつ病の原因

うつ病のメカニズムについてはまだわかっていないことが多いです。ここで述べるのは「モノアミン仮説」という研究に基づいたうつ病の原因です。

どうしたらうつ病になるのか

うつ病は脳の病気と書きましたが、通常の人の場合、脳内で、感情や身体の症状を処理するための物質の伝達や、それによる電気信号の処理が行われています。それらが適切に行われて処理できることで、精神面、身体面での平衡が保たれ、通常の日常生活を送ることができます。うつ病の場合、そのやりとりに活躍する、脳内の神経伝達物質が減少し、正常に作用しなくなることから引き起こされます。

セロトニンの減少

脳の神経間には「シナプス」という隙間があり、そこを情報伝達物質が行き来し、やり取りをすることで情報が伝わり、正常な体の作用へつながります。うつ病になると、特に重要な「セロトニン」という物質に異常が起き、少なくなり、正しく作用しなくなります。

結果的に、神経間の情報のやり取りがおかしくなり、結果として「うつ症状」と呼ばれる症状などダメージが目に見える形で体に出てきます。どうしたらうつ病になるのか、正確なメカニズムはまだ解明されていません。同じ状況下でも、うつ病になる人とならない人がいます。個人の体質や生まれ持った性格、物事への考え方などがさまざまに影響し合って、うつ病を引き起こしてしまいます。

現状のうつ病対応策

完璧な治療法がないため、今のうつ病治療は、効果があるとされる「抗うつ薬」を飲みながら、症状の改善を待ちつつ、十分な休息を取るという対処医療法になっています。抗うつ薬にもさまざまあり、効く人、効かない人、そして多くの場合、改善効果よりも如実に現れる「副作用」に苦しむこととなります。この副作用が曲者で、多くの人がそれを抑えるために、別の薬を服用するという悪循環に陥ってしまっているのが現状です。

うつ病と睡眠障害の関係について

うつ病になると、脳の機能に異常が起き、その結果、睡眠障害が起きます。睡眠は脳の疲れをとるのに必要なものであるため、それが阻害されると、症状の悪化にもつながります。何とかして睡眠を確保しなければなりません。ここでは諸々の睡眠障害について見ていきます。

入眠障害

眠りにつけなくなる症状です。いくら疲れていても、部屋を暗くしても、何時間も入眠できない症状です。不眠症のきっかけになるものです。脳が興奮してしまっていて、なかなか落ち着かないために起きます。睡眠導入薬を使って、強制的に脳のスイッチをオフにするのも選択肢の1つになります。

中途覚醒、早朝覚醒

眠りに入っても、数時間で目が覚めてしまい、そのあと、なかなか2度寝することができない症状です。うつ病に典型的な症状で、眠りを継続してとることができません。結果的に、睡眠時間が短くなってしまい、疲れも取れず、症状が悪化してしまいます。睡眠薬を併用して、眠りを継続させることも必要になります。

眠りの浅さ

通常、眠りは深い眠りと浅い眠りを繰り返すのですが、うつ病の場合、深い眠りにならず、ずっと浅い眠りを継続してしまいます。疲れもとりにくく、睡眠時間を確保したとしても、通常の睡眠ほど効果を得られません。また、浅い眠りの時の特徴である夢を何度も見ます。悪夢も多く、それもストレスになります。

過眠

逆に、ずっと眠ってしまう症状に陥る人もいます。やはり脳内の機能不全から起きます。ひたすら眠り続けてしまうのですが、それでも眠気は取れず、苦しい状態が続くことになります。脳がうつ病に対応するため、強制的に機能をオフにする意味でこうなるという人もいます。

うつ病と睡眠

うつ病になると睡眠のリズムがおかしくなります。根本的には自律神経、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、脳内のバランスがおかしくなってしまうからなのですが、この睡眠のバランス崩壊に大いに苦しめられることになります。

以下は筆者の体験なので、医師や他のうつ病経験者とは異なるかもしれません。医学的な解説ではなく、あくまで一うつ病患者の体験談ということです。ともかく、うつ病と睡眠は密接に関係していることがわかります。

まず不眠になる

うつ病、あるいは抑うつ状態のきっかけになるのが不眠です。ある日突然眠れなくなります。疲れていても頭が覚醒してしまい、夜になっても眠りに落ちません。

身体も頭も疲れているのに眠れない、それがさらに頭に負荷をかけていきます。同時に表現できない疲労感が身体を覆いつくします。

仕事中も頭がふらふらして集中できません。あくびが出て当時の上司に何度も叱られました。

メンタルクリニックへ行き、抗うつ薬や睡眠薬をもらうことになりました。正直、抗うつ薬は効いている気がせず、最後まで効果を実感できませんでした。

ただし、睡眠薬の効果はてきめんで、これによって少なくとも何時間も布団に入っていても入眠できなくなるということはなくなりました。

しかし、うつ病がこれでよくなったわけではありません。不眠は解消されても抑うつ感、抑うつ状態はさらにひどくなります。

ここではうつ病の症状については触れませんが、全然よくならず、日中の抑うつ感や焦燥感はひどくなり、まともに働けなくなります。

そのため、会社を休職せざるを得なくなります。休職によって自身の職場でのキャリアはなくなるわけですが、もうどうでもいいと思ってしまいます。これで頑張ってしまうともっと悲惨なことになるのでしょう。

その後過眠になる

休職ご2回復職に失敗しました。休職しても心のダメージは大きく、夜ゆっくりできず布団に入るとドキドキしてしまいます。睡眠薬で眠れますが、交感神経と副交感神経のバランスは明らかにおかしくなっていました。

とうとう退職を余儀なくされた筆者は、その後気が抜けたように激しい眠気に襲われ、ひたすら眠ることになります。

脳が睡眠を欲しているのか、夜眠り、夕方15時、16時くらいまでベッドから出られません。1日12時間以上の睡眠を2年間取り続けることになります。

目覚めてもすぐに襲ってくる強烈な眠気です。眠っても眠ってもいくらでも眠ってしまいます。

この科学的機序についてはわかりませんが、脳がうつ病で壊れてしまった中で、人間の本来持っている回復機能が働いていたのかもしれません。

特に一度目覚めた後の「二度寝」は睡眠薬不要でいくらでも眠れます。

この時にはあまり夢を見なかったと記憶しています。夢を見るレム睡眠ではなく、深い眠りのノンレム睡眠が「ノンレム睡眠→レム睡眠→ノンレム睡眠→・・・」の90分サイクルを外れて、身体がノンレム睡眠を続けさせていたのかもしれません。

うつ病の原因については上述のように「モノアミン仮説」が有力ですが、それでも解明されていないメカニズムですので、なにか睡眠の不思議な効果が作用していたのかもしれません。

ともかく過眠状態が2年ほど続き、ようやく日中動ける(≠働ける)ようになりました。本来、うつ病を治すのに休職数か月というのは無謀なのかもしれません。年単位の休息と1日12時間の睡眠くらいとらないと、この厄介な精神疾患は日常生活を送れるくらいには戻らないのかもしれません。

参考:全国健康保険協会HP

眠気に抗わずとにかく眠るのが症状緩和への道

筆者の場合、退職を余儀なくされ、あとは身体が求めるままに過眠していました。そこおかげかわかりませんが、最大10種類に及んだ服薬が漢方薬と頓服の睡眠薬のみに減りました。

もちろん、医師ではないので、断薬や減薬が良いとは申しません。筆者の場合、2年間の過眠生活で脳が回復したのかもしれません。しかし、これは自己診断ですので、本当にうつ病の方は、医師の診察を受けてください。

眠ること自体は悪くないはずですが、それが許される生活環境かどうかはその人次第です。お子さんがいるのに2年間1日12時間睡眠は難しいからです。

まとめ

うつ病はその人それぞれの原因があり、効く薬(効かない薬)も異なっていて、回復法は定まっていません。

しかし、睡眠をとることは脳を休めることにつながるので、可能な限り時間を確保して「過眠」と呼ばれるくらい眠ることは可能ならした方がよいかもしれません。

あくまで個人の見解ですが、しっかり眠って動けるようになったら陽の光を浴びてセロトニンを作りやすい環境を作ってあげるべきですね。