うつ病を予防するためには、質の高い睡眠が非常に重要です。筆者もおおよそ2年間の「ほぼ寝たきり」生活を送りました。今はかなり回復していますが、それはうつ病の回復には、想像以上の睡眠が必要だったことがわかります。
そもそもうつ病にならない、精神疾患への抵抗力を高めるためには十分な睡眠が不可欠です。十分な睡眠とは「深い睡眠」であり、そのためには、注意すべきことがあります。
いくら早くベッドに入って、身体が疲れていても眠れないことがあります。そうした状態から眠りやすい状態に変えていかなければなりません。
以下は、うつ病予防のための睡眠方法の一部です。ぜひ実践してみてください。
うつ病にならない睡眠の工夫
うつ病やさまざまな精神疾患のリスクを減らすにはどのような睡眠に心がけたらよいのでしょうか?
ここではうつ病のリスクを減らす生活上の工夫、生活習慣を紹介します。
規則正しい睡眠スケジュールの確立
毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きることで、体内時計(生体時計)を調整し、睡眠の質を向上させることができます。
体内時計がおかしくなると、中途覚醒や眠りに入りにくくなるなど身体のリズムがおかしくなります。
また、睡眠に重要な自律神経系も体内時計が乱れるとおかしくなります。睡眠には副交感神経が融資になる必要がありますが、体内時計が乱れてしまうと、いつまで経っても交感神経優位になり、副交感神経が働きません。
そのため、(疲れていても)脳が覚醒してしまい、いつまで経っても眠りに入ることができなくなってしまいます。
快適な寝室環境の整備
寝室はくつろげる雰囲気であるべきです。暗く静かな環境、快適なベッドや枕は良質な睡眠を促進します。
快適な室内環境を整備するためには、ベッドや枕をふかふかのものに変えるなど、寝具を工夫します。これはお金を掛ければ誰でもできることなので、地元の寝具店などにも相談しながら、買い替えることを検討してください。
布団であれば、新規に買わなくても「打ち直し」(中の羽毛などを変える)ことで、リニューアルできます。
もちろん、室内のカーテンを変える、室内を暗くする、防音遮光カーテンを設置するなどして、静かで暗い睡眠環境を整備することは大切です。
それにより、視覚や聴覚からもリラックスできるようになります。騒がしいカプセルホテルと、広々としたグランドホテルでは後者のほうが圧倒的に眠りやすいことからも、体感的にわかっていただけるはずです。
電子機器の制限
寝る前にスマートフォンやタブレットの使用を避け、ブルーライトの影響を軽減します。これは、メラトニンの分泌を促進し、眠りに調整するのに役立ちます。
スマホやテレビゲームの光刺激は、脳を興奮させ、睡眠を妨げます。少なくとも眠りたいと思っている時間の1時間前からは、スマホいじりはやめた方がいいでしょう。
人によってはスマホをいじりながら寝落ちする人がいるのは事実ですが、全体を通して考えると、寝る前のスマホは眠りに対してネガティブに働きます。
可能な限り、スマホやテレビゲーム(携帯型)を避け、読書(電子書籍ではなく、紙の本)などで時間をつぶすのをおすすめします。
規則的な運動
適度な運動はストレスを軽減し、睡眠の質を向上させる助けになります。ただし、寝る直前の激しい運動は逆効果となることがあります。
日中1時間程度軽度の運動をしていると、適度な睡魔を導きます。あるいはお風呂上りに「ストレッチ運動」をするのも効果的です。あくまで身体を酷使しすぎないような軽い運動を行うのがポイントです。
寝る前に外を走るのは、ジョギング程度でも人によっては過度な運動になります。日中のジョギングならば問題なく、むしろ推奨するものですが、就寝前には無理をして運動しなくてもよいです。
「1日1万歩」など目標を立てるのはとても良いことですが、それが達成できないかもしれないと慌てて、夜遅くに外を走ると逆効果になってしまいます。
あくまでもできる範囲で、身体に負荷がかからないように軽めの運動を続けるのが重要です。その日できなければ無理しなくて大丈夫です。「運動しなければ」というプレッシャーが圧力になり、かえって眠れなくなってしまうかもしれません。
ストレス管理の技法を身に付ける
リラックステクニックや深呼吸法、瞑想などを取り入れることで、日中のストレスを軽減し、夜間のリラックスをサポートします。
リラックステクニックは、うつ病の回復にも効果的に「自律訓練法」「丹田呼吸法」に倣うと良いでしょう。自律訓練法や丹田呼吸法はストレスを減らし抑うつ感に対抗するための呼吸法です。
特に丹田呼吸法は、主に東洋の伝統的な健康法や瞑想の一部として使用される技術です。丹田は、体の中心に位置するとされるエネルギーの焦点であり、丹田呼吸法はこのエネルギーに焦点を当てた特定の呼吸法や瞑想技法を指します。
おへその下あたりに意識を向け「体は重い」「体は軽い」「体は暖かい」・・・など感覚を変えてそれを呼吸とともに感じるかどうかを確認していきます。こうしていくことで、身体の緊張感が取れ、リラックスしていきます。
これらの呼吸法は、身体のリラックスや気の流れを調整し、精神的な安定や集中力の向上などを促進する目的で行われます。
呼吸法によるストレスコントロール、リラックステクニックは、体得できればかなり意識的に抗ストレスをもたらします。リラックスできると、睡眠も十分に取れるのでうつ病に対する免疫力も上がっていくでしょう。
カフェインやアルコールの制限
寝る前のカフェインやアルコールの摂取は、睡眠の質を低下させる可能性があるため、避けるか制限することが重要です。
カフェインとアルコールは、睡眠に影響を与えることが知られています。そのため、適切な摂取量や摂取タイミングの管理が重要です。
カフェインは中枢神経興奮作用を持ち、覚醒を促進します。摂取された後、効果が約4〜6時間続くことがあります。夕食後のカフェインも眠れなくなる可能性があります。
寝る前の数時間は、カフェインの摂取を控えることが重要です。寝る前のカフェイン摂取は、入眠を妨げ、睡眠の質を低下させる可能性があります。飲むならホットミルクやノンカフェインティーにしてください。
アルコールは中枢神経抑制作用を持ち、リラックス効果をもたらします。しかし、アルコールの摂取が睡眠の質に悪影響を与えることがあります。
寝酒で眠れるかもしれませんが、睡眠は浅くなりその後の睡眠のフェーズや深さに影響を与え、中途覚醒を引き起こすことがあります。疲れが取れるノンレム睡眠にならず、だらだら浅いレム睡眠が続くことがあります。
寝る前の数時間は、アルコールの摂取を避けることがすすめられます。アルコールの摂取量や個人の代謝によっても影響が異なりますが、一般的には適度な摂取が重要です。もちろん、アルコールに弱い人は飲酒を避けてください。
毎日同じ時間に起きることの重要性
同じ時間に起きることで、生体時計が正常に機能し、日中の活動や夜の眠りが調和します。
体内時計や生体リズムは、一定のサイクルで機能しています。毎日同じ時間に起きることで、これらの生体リズムが安定しやすくなります。安定したリズムは、睡眠、食事、活動などの生活習慣を調整しやすくし、全体的な健康に寄与します。ストレスにも強くなります。
一定の起床時間を維持することは、睡眠の質を向上させるのに役立ちます。規則正しい生活リズムは、体内時計を調整し、深い眠りにつくのを助けます。逆に、不規則な睡眠スケジュールは、睡眠の質を低下させる可能性があります。
規則正しい起床スケジュールは、体内のホルモンの分泌を調整するのに役立ちます。例えば、朝に規則正しく光にさらされることで、メラトニンという睡眠に関わるホルモンの正常な分泌が促進されます。
また、心理的な安定感も抑うつ感を減らします。うつ病に対抗するためには、規則正しい起床が大切です。もちろん、たまには遅くまで気が済むまで眠るのも良いでしょう。
専門家への相談
持続的な睡眠の問題や心理的な不安に対しては、専門家や医師に相談することが重要です。早期の対処がうつ病の予防につながることがあります。
自分だけの診断は危険であり、不眠が一定程度続くのであれば、何か体調不良がある可能性が否定できません。
まず内科などかかりつけ医に相談し、そこからより専門的な外来に行くと良いでしょう。精神科は抵抗がある、「精神科通院歴」が付きたくない、という方は「睡眠外来」の受診をおすすめします。
ここならば睡眠について研究している専門医が、適切や治療をしてくれるはずです。
まとめ
以上、うつ病にならない、予防するための睡眠についてお話ししました。睡眠によって心身の疲れが取れ、抗ストレスに身体が変わっていきます。
もちろん、ストレス源(会社の上司など)がわかれば、そこを変えることが大切ですが、不眠が続くようだとその元気もありません。
一度うつ病になると、回復には年単位を要します。そうならないように抗ストレスの身体を作って時間を稼ぎながら、ストレス源への対応をしていきましょう。